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翻訳家の岸本佐知子さんのエッセイ、「ねにもつタイプ」を読みました。
とても良かったので、その中の「星人」というところを少しご紹介します。
『「気がつかない星人」は、一言で言えば“ものごとの隠された意味”が読めない。(以下略)
「気がつかない星人」は、“言外のニュアンス”に対して鈍感である。だからどんなにひどい皮肉を言われても、それが皮肉だとは気がつかず、かえって褒められたと勘違いして喜んだりする。(以下略)
「気がつかない星人」には、言葉のレトリックが通じない。(以下略)
「気がつかない星人」はまた、「気がきかない星人」でもある。他人の発する無言の信号をキャッチしないので、“さりげない心遣い”とか“気働き”とか“あうんの呼吸”“相手を立てる”などという芸当は夢のまた夢である。だから、知らないうちに目上の人の不興を買っていることがしょっちゅうだし、当然、異性にはもてない。
私は、いつか自分の星に帰る日を夢見ている。そこでは誰もが「気がつかない」ばかりか、気がつかなければ気がつかないほど愛されるのだ。言葉はつねに額面通りだから、裏の意味をあれこれ詮索する必要もない。皮肉もレトリックも存在しない。気働きなんかする奴は、変人扱いだ。
そこはきっと、緑したたる美しい星にちがいない。』
http://www.bk1.jp/review/0000444295
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