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最近この話題の投稿が多いので、アスペルガーかつ専門家の立場でコメントしたいと思います。
医師の問診の後最初に受けるのが脳の画像診断や脳波検査、そして知能検査などのペーパーテストになります。
画像診断で現在わりと行われているのがMRIという磁気による画像検査です。大きな病院だとこれにRI(血管に造影剤を注入し、脳の血流をX線撮影します)f-MRI(ファンクショナルMRI:脳の活動の様子も見ることができます)やPET(作業時の脳の血流量を調べる検査です)が加わることもありますが、f-MRIは設置費だけで三億円かかる上に磁気の影響を受けない場所に設置しなくてはいけないというかなり厳しい条件があるため、MRIやCTが一般的でしょう。
ただし自閉症の場合だとMRIや脳波では異常がないケースも多いです。私も最近別な理由で頭部MRIを取りましたが、異常なしという結果でしたし、実際画像を見せてもらっても「年齢相応の脳だなぁ」と思う程度でした。
ペーパーテストでスタンダードなのはWAIS-R(ウェイスアール)です。これはウェクスラーという人が開発した知能検査で、小児だとWISC-III(ウィスクスリー)、幼児だとWPPSI(ウィプシ)という物があります。年齢に応じて使い分けます。小児の場合田中・ビネーや新版K式発達検査というものを用いることもあります。ウェクスラー式のいい所は言語面と非言語面の知能指数が出ること、下位項目のバリエーションが豊富なので様々な視点から分析ができることが挙げられますが、時間がかかるため患者への負担が大きいという欠点もあります。
この他に補足するための検査として各種心理テスト(ロールシャッハ、矢田部・ギルフォード検査、内田クレペリン検査、エゴグラムなど)、記憶テスト(WMS-Rなど)、前頭葉検査(ストループ、ウィスコンシンテスト)等があります。小児の場合認知処理と習得度を検査するK-ABCという検査や言語能力をみるITPAといった検査もあります(他にもいくつかありますが、標準化されているものを中心に挙げました)。
このような検査の場合、まず検査を知っていると正確な値が出ないので注意が必要です。だから以前アスペルガー関係者で私のロールシャッハを取りたいという人の申し出を断らざるを得ませんでした(大学で概論を勉強していたため)。またロールシャッハ・テストは画像自体を公表してはいけないことになっているため、あまり絵について話をしてはいけないというルールになっています。
同様のことは他の検査についても言えて、検査の問題自体が分かるようなことを公にするとまだ受けていない人が検査を受けた際に予測反応が出てしまって実力よりも高い得点になってしまうことがあるため配慮が必要です。よく私も担当のお母さん同士で内容を言ってしまいそうなことがあったので「それはやめて下さい」と釘を刺したことが何度かありました。
検査についてもやはり検査者の腕によってかなり結果が異なる場合があります。また結果の分析がきちんとできていないとせっかく検査をとっても無駄になってしまいます。検査を正確に読み取れるようになるにはトレーニングと経験が欠かせません。そういう意味では症例数が多い所で検査を受けた方がいいと言えます。
ただやはり結果が出てもそれをいかに日常生活で活かせるかが大切なのだと思います。仕事をしていても知能指数ばかり気にされるご家族もいましたが、そういう方には私はわりとはっきり「あくまでも知能指数は目安にしか過ぎませんし、そこから分かったことを日常でどう気を付けて行かれるかが今後の課題なのです」と伝えていました。
検査で分かることはあくまでも断片にしか過ぎません。そこから日常生活をどう工夫して過ごしていくかが大切なのだと思います。
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