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御紹介
「学習困難の脳内機序の解明と教育支援プログラムの開発・評価」より
http://www.ristex.jp/examin/brain/program/difficulty.html
これまで、学習困難は言語性のものと非言語性のものにおおまかに分類されるのみであったが、現実の学習困難を規定している要因は、様々な認知情報処理の過程の障害であることがわかってきており、それが多様に形を変えて行動上に現れている。本研究では、学習困難児の体系的な支援方法を構築するためには、どの過程に障害があるのかを、脳機能、認知機能の水準で解明するとともに、日常の行動にどのように反映されるかを明らかにする。そして、個々の人間の障害にあった療育法を間発し、証拠にもとづいたその方法の効力を評定し、さらにそれによる脳機能の改善を目指した研究を行った。
(1)学習困難の質的差異に基づく学習支援の実施
「読むこと」「書くこと」に関する困難の根本には、「読むこと」「書くこと」に問する運動や運動協応の問題から来る「流暢性」があると考え、「読むこと」「書くこと」における「流暢性」に対して直接的、迂回的な指導を用いることによって向上させ、そのことで「読むこと」「書くこと」だけではなく、「読んで理解すること」「書いて表現すること」の改善につなげた。また、学習困難を持つ子どもたちの「読んで理解すること」「書いて表現すること」における、「理解」や「表現」の困難は、「読むこと」、「害くこと」の流暢性の困難による二次的な問題であることを明らかにした。
日常的な「書くこと」の場面は設定可能なNIRSを用いると同時に、多くの研究で見られる「書くことが困難な子ども」と「健常見」の横断的な比較ではなく、「書くこと」が困難だった時と、介入指導により「書くこと」の流暢性が改善されたときの比較検討を行った。その結果、「読むこと」の困難とは異なる補足運動野などを含む前頭一頭頂領域における流暢性の困難が「書くこと」の困難の一つの原因であることを示した。同時に、ワープロなどの代替手段を用いた迂回的な指導を実施することにより、この困難を克服することが可能であることを行動データだけではなく、脳機能の観点からも明らかにした。
あわせて、これらの研究・支援においては、コンピュータ教材を用いたことて、子どもの行った学習の結果が遂行ごとに子どもにフィードバックされることで、子どもは自分一人で学習を進めていくことが可能となった。学習困難をもつ子どもたちの学習支援において、「一人で課題を実施すること」「所産に随伴したフィードバックによる動機づけの維持と達成目標の自己設定」の2点が学習環境整備の上で必要条件であることを、実際のデータで明確にした。
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