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自閉症スペクトラム指数(AQ)テストというものがあります。
健常範囲の知能を持つ成人の自閉症傾向の程度を測定するスクリーニングテストです。
以前、この掲示板でも話題になったので知っている人も多いと思います。
AQテストは50問の設問からなり(50点満点)、得点が高いほど自閉症傾向が強いことを意味します。
また、33点が識別点とされています。
この33点という識別点について、「AQテストの結果が33点以上の人は自閉症スペクトラムの可能性が高い」という趣旨の発言をネット上で見かけることがあり、気になっていたので私なりに検証してみました。
ここに1万人の成人がいるとします。
発表されている統計データ・推計データによると、その中には100人の自閉症スペクトラムの人が含まれています。
その内訳は、知的障害を伴う自閉症の人が30人、知的障害を伴わない高機能自閉症とアスペルガー症候群の人が70人です。
また、自閉症スペクトラムではない人9,900人の中にも15人の知的障害者がいます。
知的障害がある45人はAQテストの対象から除外されるので、残り9,955人がAQテストの対象者となります。
AQテストを作成した研究者によると、識別点を33点としたのは、AQテストの結果が33点以上の人の割合が自閉症スペクトラムの人では88%であるのに対し、自閉症スペクトラムでない人ではわずか3%しかないためだそうです。
よって自閉症スペクトラムの人70人のうち、AQテストの結果が33点以上の人は62人、33点未満の人は8人いることになります。
また自閉症スペクトラムでない人9,885人のうち、AQテストの結果が33点以上の人は297人、33点未満の人は9,588人になります。
整理すると、AQテストの対象者9,955人のうち、33点以上の人は359人で、そのうち自閉症スペクトラムの人は62人(17%)、自閉症スペクトラムでない人は297人(83%)、33点未満の人は9,596人で、そのうち自閉症スペクトラムの人は8人(0.1%)、自閉症スペクトラムでない人は9,588人(99.9%)です。
この結果をみると、AQテストの識別点33点について、
「自閉症スペクトラムの人はAQテストの結果が33点以上の可能性が高い」(確率は88%)
「自閉症スペクトラムでない人はAQテストの結果が33点未満の可能性が高い」(確率は97%)
「AQテストの結果が33点未満の人は自閉症スペクトラムでない可能性が高い」(確率は99.9%)
と考えるのは正しいのですが、
「AQテストの結果が33点以上の人は自閉症スペクトラムの可能性が高い」(確率は17%)
と考えるのは正しくないと言えそうです。
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