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夢色さん、こんにちは
六華(りっか)と申します。
想像力とは、ある専門家によると、「目の前に具体的に存在しない物や可能性を直感的に取り扱う能力」だそうです。
他者の感情を推し量ること、心理的な距離を量ること、過去・現在・未来という時系列に物事をつなげて、先の見通しを立てること、物事の概念を理解することなど。
想像力があると、「A=BだからA'=B'」「A=B、B=C。よってA=C」「A→B、B→C。よってA→C」といった類推する力が働きます。
たとえば、「知っている人には挨拶をしましょう。それが礼儀です」と教えられたとします。
「朝はおはよう。夜はこんばんは」と判断できるのが、「A=BだからA'=B'」の考え方です。
さらに、「目上の人には敬語を使いましょう」と教えられた場合。
先生に対する挨拶は「朝であり、目上の人だから『おはようございます』」だと判断できるのが、「A→B、B→C。よってA→C」です。
こうした定型であれば自然と身につく、いろいろなパターンを生み出せる能力が、自閉圏の子どもには欠けています。
だから、物事を判断するのが難しく、初めて遭遇する出来事に対応できない。
「礼儀とは何か」「目上の人とは誰と誰?」と、定型ならば考えもしないことを疑問に思い、
「友達には『おはよう』、先生と隣のおばさんには『おはようございます』」と、ひとつひとつを覚え込むことが必要になる…。
これは、とても労力を使うことですよね。
適切な人との関わり方も想像できなくて、摩擦が生じます。
自閉児・者のさまざまな不適切行動は、想像力の障害がベースとなっていることが多いように感じます。
もちろん、想像力の障害には個人差があります。
私の場合は他者の感情を想像できるために、想像力の障害には気づいていませんでした。
でも、状況から物事を判断するのは苦手です。
まったく想像力がないわけではなく、「薄い」のが実情で、方向性の違う想像をしてしまうのです。
たとえば、飲食店でバイトしていたときのこと。
「玉子を10個買ってきて」と千円札を渡され、「玉子は1パックって数えるよね? 10パックの言い間違い?」と混乱して、聞き返しました。
お店の人には、「千円札で10パックも買えるわけないでしょ!」と怒られましたね…。
冷静に考えれば、分かることですよねえ。
でも、瞬時の判断は難しいです。
自分では「相手の言い間違いだったら、また買いにいかなくてはいけなくなるから、確認した方がいい」と考えたりして。
「自分なりに考えている」から「想像できている」のだと、ずっととらえていました。
こうした「想像したつもり」で、失敗を重ねている当事者は、おそらく多いでしょう。
対処の仕方としては、いろいろな経験を積み重ねて、引き出しを増やすということがよく言われます。
気の遠くなるような話ではあるけれど、「物事にはパターンがあるのだ」ということを、身体で覚えていくしかないと思っています。
夢色さんのお子さんは中学生とのこと。
これからまだ能力を伸ばしていける余地はあると思います。
まずは夢色さん自身が療育機関や学校の先生の話をよく聞いて、お子さんがどういう場面での想像を苦手としているかを把握されること。
それが大切なのではないでしょうか。
おうちでの様子も意識して観察しているうちに、注意するべき部分が見えてくるかもしれません。
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