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最近、ニキ・リンコさん&藤家寛子さんの対談本「自閉っ子、こう
いう風にできてます!」をよく読んでいます。
同時に、自分自身についてもあれこれ思っているので、今回はその
ことで書き込みます。
僕の場合、感覚過敏はありません。「社会性」「コミュニケーション」
「想像力」の面での困難については、該当すると思われる特徴をいずれ
も持っていますが、この本で紹介されている事例に比べると、僕の場合
は程度が軽く、自分は定型発達的とも思えます。
一方で、自分の経験との共通性も確かに感じるのです。主にそのこと
について。
ここで、僕のもうひとつの面である、聴覚障害者としての経験に
ついて語りますね。
僕は補聴器を使えば、かなり音声が聞こえます。健聴者に比べる
と、実は質的には大きな差があるのですが。聴覚障害を持っている
ことは小さい頃から知っていましたが、自分の障害が重いものだ
とは思っていませんでした。
学校の授業であったくらいだから、音楽を聴く機会は昔からよく
あります。かつては、音楽の感じ取る能力に障害があるとは、全然
思いませんでした。自分でCDを買って本格的に楽しむように
なって、歌詞の聞き取りがときには難しいことに気づきました。
その後、好きな歌手のコンサートによく行くようになったのですが、
そこで気づいたことは、CDのとき以上に歌詞の聞き取りが困難で、
ひどい場合には、CDでは何百回も聴いたような曲でも、歌詞の
内容の理解どころか、今、その曲を歌っていることすら分からない
ことです。そして、よく言われる一体感なるものを感じないこと
にも気づいたのです。
僕が音楽を聴くとき、それは美しくて楽しいものに感じられます。
でも、健聴者に比べれば、その音質は劣悪なんでしょう。そのことに
気づくまでに、とても長い時間がかかりました。
自閉スペクトラムの話に戻ります。
対人関係構築やコミュニケーションの難しさは昔からあったのです
が、他人と比べて不得意なことは分かっていても、他人との差は
あまり気にならなかったような気がします。
ところが、自分から行動する範囲が拡大し、さらに社会人になると、
その影響を強く感じるようになりました。自閉スペクトラムに関連
する本を読んだりするようになって、世の中の多数派と大きく異なる
ことを知りました。
聴覚障害を持っている者としての体験もあるので、「自閉っ子…」
の中に登場する、「自分の状態が普通だと思っていた」という話は
よく分かります。
僕の場合も、自分に入ってくる情報はどうしても少なくなります。
情報を入手するときに、時には多大なエネルギーを使います。
音楽は好きですが、流行には無関心で、自分の好きな歌手たちに
集中して楽しんでいます。しかも、一度ファンになったら、ファン
を辞めません。広い範囲で、いろいろ聴いてみる余裕はなく、魅力を
感じる範囲も狭いので、そうするのが最も有利なんでしょうね。
自分のこだわりにもそれなりの理由があるんだ…。
障害とは、単に「あることができない」だけではなく、その人に
とっての、世界の見え方に影響を及ぼすものだと思います。
聴覚障害、アスペ的傾向を持っているので、障害を持っていること
について深く考えますね。
30代に入ってから、自分自身の正体を知ったという気分がするの
ですが、これからどうやって生きていけばいいのか、模索が続きます。
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