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> “住むことも、人権の一つです”
>これは…最近読んだ岩波文庫の“居住福祉”という本の中の一説です。
障害者の住居の確保は、今、福祉の現場で最も苦労している問題のひとつです。大人のアスペルガーに関しても、まだそこまで福祉の手がまわらないだけで、決して無縁なことではありません。
今までずっと施設で暮らしてきた人や、精神科病棟で暮らしてきた人たちのうち、比較的障害程度が軽い人たちについては、施設や病院から出して、地域社会で生活させようというのが、今の政府の方針で、現在進行形で施行されています。
自宅(持ち家)があって、親族と同居するか、親族の近くに住むのが一番よいのですが、現実にはそう都合よくいきません。ご心配されているように、アパートを借りるだけでも経済的負担が大きく、連帯保証人を要求されて、その確保に苦労するケースがほとんどと言ってもよいでしょう。私も福祉にたずさわる人間として本音を言えば、敷金礼金保証人不要で家賃も安くしてくれる親切な大家さん探しは大変なのです。
アスペルガーの場合、対人関係が苦手な人が多いので、ひとり暮らしをさせると、職場と自宅の往復だけで、友人ができず、病気で寝込んでいても誰も気付かないというケースがあります。自宅に一人暮らしの高齢者を定期的に訪問してケアするように、アスペルガーの人にも、福祉専門員が定期的に訪問して、困っていることがあればサポートする必要があります。
> #大人AS者に優しい住みかって、どんなものなのかな??#
私は、グループホームのような少人数での共同生活という居住形態が一番良いのではないかと思っています。欧米では、福祉とは関係なく、ルームシェアという他人同士が共同生活する居住形態がごく普通にありますが、日本でも最近、まだ少数ですが、同じ試みがなされています。
寝室だけ個室で、リビング、ダイニング、キッチン、バスなどを共同使用するので、1人当たりの居住コストを低くできるうえ、人付き合いが苦手な人でも、毎日顔を合わせて挨拶を交わしているうちに自然と親しくなれるというメリットがあります。部屋からまるきし出てこないと、「病気じゃないのかしら?」とルームメイトが心配しますし、外出したまま帰ってこない日が続くと「事故に遭ったでは?」と、やはり心配しますので、危機管理のうえでもメリットがあります。
お互い他人ですので、個々のプライバシーに干渉し合うことなく適度に距離を保って、困ったときだけ助け合うという擬似家族的関係が形成できれば、一番良いと思います。「みんなが独身者ならそれでもよさそうだけど、結婚して家庭を持つとなると、そううまくはいかないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、それは日本にそういう習慣が今までなかったからで、複数の家族で大きな1軒の住宅を共有して住めば、リビングや庭などの居住空間を広くとって有効利用できて合理的です。昔は日本でも親族が1軒の家で共同生活していましたから、家族同士で信頼関係ができれば、十分実現可能な居住形態だと思います。
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