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貴兄は判決要旨を読んだうえで、そういう発言をしているのですか?
判決要旨もろく読まずに、公然とアスペルガーの掲示板にこのような意見を投稿するほど、貴兄が無知蒙昧で非常識な人間でないことを信じますが、議論のたたき台を示すうえで、以下に判決要旨全文がアップされていますので、理解できるまで読んでください。
http://www.jngmdp.org/wp-content/uploads/20120730.pdf
>殺人をした人間が障害を理由に減刑されるなんて有り得ません
この一文で貴兄に刑法と刑事訴訟法及び裁判の実際と判例の知識がまったく無いことがわかりますので、平易な文章をもって説明しましょう。
この裁判は「刑事裁判」です。同じ「裁判」と名が付いても「民事裁判」の場合は裁判そのものの意味がまったく異なりますので、この点をまずご理解ください。
刑事裁判では、罪を犯した人間を、原則公開の裁判所の法廷において、法と証拠に基づいて審理し、有罪か無罪を決定し、有罪であれば、刑法の条文に明記された範囲内において刑の内容を決定します。
この事件で問題になっているのは、被告人(裁判にかけられている人)の「責任能力」についてアスペルガー症候群であるという鑑定結果を証拠として認定しながら、減刑理由として考慮しなかったばかりでなく、社会秩序の維持を理由として求刑より長い有期懲役を科すとの判決がなされたことです。求刑より判決が重いという事例はまれですが、法文上は裁判所の裁量にまかされますので、法定刑の範囲内であればこのような判決も実際にあります。
責任能力とは、被告人が、自分の行為(この事件では包丁で被害者の腹部を刺し、肝臓を貫通しています)と、その結果(被害者の死亡)について、認識可能な能力のことをいいます。(殺意があったか否かはまた別の問題ですが、この事件では被告人が殺意を認めているので問題にはなっていません)
犯行当時、被告人に十分な判断能力がなく、自己の行為とそれがもたらす結果の重大性についての認識が十分でない場合、責任能力において酌量すべき事情があったとして減刑されるのが通常ですが、医師の鑑定結果を減刑理由の証拠として採用するか否かは裁判官の裁量にまかされますので、求刑どおりで減刑しない、あるいは本件のように鑑定結果を証拠採用したうえでさらに重い刑を科する判決を出すことも理論上可能です。
この判決が問題になっているのは、判決を出した大阪地裁(これは裁判員裁判ですので、具体的には審理と採決にたずさわった裁判官と裁判員ということになります)にアスペルガー症候群についての理解がなく、アスペルガー症候群である被告人を野に放つことは危険きわまりないから、許される限り長い有期懲役を科して社会から隔離することが相当と判示しているということです。
つまり、この判決は、貴兄のような「障害者差別主義者」の意思が、司法判断に具現化されたことが問題とされているわけです。
貴兄の無知なるがゆえの不安と危惧も理解できますが、各種団体が抗議運動をするのは、「(貴兄のような)差別主義者が裁判員に選ばれて裁判をされたのではたまったものではない」「公正であるべき司法が世間一般人の誤解と偏見に基づく裁判をしてよいのか?」というのがその理由のひとつだと私は思います。
具体的には、以下「アスペルガーを人間扱いしない不当判決」として書きましたので省略します。
http://www.nadita.com/asbbs/c-board.cgi?cmd=one;no=38849;id
この判決は、
「アスペルガー症候群=危険きわまりない異常者=刑務所に隔離すべき」
という短絡的で実証データに基づかないアスペルガーに対する誤解と偏見を浮き彫りにしたと同時に、マスメディアの報道を通して無意識的に刷り込まれたアスペルガーに対するネガティブなイメージを持った一般国民の誤解と偏見が、そのまま判決という形に現れるという、裁判員裁判制度の致命的欠陥を露呈する結果にもなりました。この2点から、今後もこの事件は議論されていくことになるでしょう。
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