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研究結果
今回の研究は、2000年から2004年のNational Health and Nutrition Examination Survey (NHANES)のデータを利用して平均的な曝露レベルの集団として無作為に8歳から15歳までの1,139名を抽出しました。
有機リン系剤は、体内で加水分解されジアルキルリン酸が生成します。それで、この物質が特異的な暴露指標とされています。これの尿中の濃度を調べました。その結果、ほとんど(93.8%) で検出され、米国では有機リン系剤にほとんどの子が曝されていることがわかります。
米国では、ジアルキルリン酸を2群・6種に細分して検出しています。(日本は2群、4種)
有機リン農薬とその尿中代謝物の一覧表をみると、有機リン系剤は綺麗に二分されます。これは、有機リン系剤の基本構造が、ジエチルリン酸あるいはジメチルリン酸(あるいはジエチルチオリン酸、ジメチルチオリン酸)が各種フェノール類と脱水結合したものだからです。http://www.maroon.dti.ne.jp/bandaikw/news/pestcide/USA/CDCnat_rep_human_exp.htm
ジメチルアルキルリン酸の群
ジメチルリン酸(DMP、日本でも検出対象)
ジメチルチオリン酸(DMTP、日本でも検出対象)
ジメチルジチオリン酸
ジエチルアルキルリン酸の群
ジエチルリン酸 (DEP、日本でも検出対象)
ジエチルチオリン酸 (DETP、日本でも検出対象)
ジエチルジチオリン酸
そして、今回の研究ではジアルキルリン酸の検出された全体の集団、つまり有機リン系剤に曝されている事では、ADHDのリスク上昇は検出されませんでした。細分してみるとジエチルアルキルリン酸でも、リスク上昇は検出されませんでした。ジメチルアルキルリン酸の尿中濃度が10倍になると(およそ下位25%から上位25%の差に相当)、注意欠陥多動性障害と診断されるリスクが1.55倍と高かった。その中でも、最も量の多いジメチルチオリン酸でみると、尿中濃度が検出限界未満と比べて、検出限界以上で中央値より高い上位半分では1.93倍のリスク上昇があった。
「著者らは研究の限界として、尿を1回しか採取していないため有機リンの長期曝露を反映していない可能性がある点や、有機リンの代謝産物の測定と注意欠陥多動性障害の診断を同時に行なっているため、注意欠陥多動性障害の小児が有機リン系農薬に多く曝露するような行動をしている可能性を排除できない点などを挙げている。その上で、有機リンの曝露レベルごとに将来の注意欠陥多動性障害の発生率を比較する追跡調査が今後必要だと考察している。」確かに追試や追跡調査が必要です。
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