HTML5 & CSS3 で電子書籍
も紙の本も作れるという話

2013-11-30

for HTML5 Conference 2013 LT

村上真雄 (@MurakamiShinyu)
Antenna House Formatter 開発者

HTML&CSSでWebを作れるなら、本も作れます。

電子書籍の世界標準仕様 EPUB。
EPUBの中身は、HTMLのコンテンツとCSSのスタイル、それと本の情報をまとめたもの。
Amazon KindleはEPUBと少し違うけど、HTML+CSSでできてるのは共通。
EPUB3.0（2011年）で、CSS3 Writing Modesによる縦書きとか、HTML5により動画やインタラクティブな電子書籍も可能に。

あらゆるものがHTML5でできるように…

EPUB電子書籍もそうだけど、アプリの形した電子書籍も
その他いろんなアプリも
サイネージとか、次世代テレビであるとか
それからこのプレゼンも
テキストの表示とレイアウトをともなう、あらゆるものがHTML5とCSSでできるようになってきてる

では紙の本や雑誌は？

紙は旧メディアだからHTML5は関係ない？
いえいえ、そんなことはありません。
紙の印刷・組版の技術はすばらしいし読みやすい。Webのレイアウト技術はそれを追っているところ → CSS3+

（紙の）本を作るためのツール

今の主流は、DTPソフト。Adobe InDesignなど。それでPDFを作って、印刷へ。
わりと古くから、バッチ組版（自動組版）というのもあります。有名なのはTEX。
構造化文書（XML）の自動組版のための標準：XSL (XSLT & XSLFO)。
それで、これからは？　紙の本と電子書籍と、どっちもHTML+CSSで、同時に作れたらいいよね！

HTML+CSSで、紙の本（そのためのPDF）を作るツール

印刷・PDF生成のために特化した、HTML+CSS組版エンジンがあります。
- オープンソースでは WeasyPrint。開発者はCSS3 Paged Media仕様のEditorでもあるSimon Sapin氏。
- 商用の組版エンジンでは PrinceXML が有名。CSS仕様の生みの親であるHåkon Lie氏(Opera CTO)は、この開発元YesLogic社の役員でもある。
- そしてわが Antenna House Formatter。多言語対応XML自動組版エンジンとして世界で結構使われてます。縦書きなど日本語組版にももちろん対応。
Webブラウザを組版エンジンとして印刷用のPDFを作るためのJavaScriptライブラリ BookJS というのもあります。

HTML+CSSで組版されてる本の一例

『W3C技術ノート　日本語組版処理の要件』

W3C日本語組版タスクフォース編

B5 / 408ページ
定価 5,040 円（本体+税）
ISBN978-4-501-55020-2 C3004
[2012年04月刊行]

“まえがき”より引用：
「本書は，W3Cの技術ノートである“Requirements for Japanese Text Layout”（以下JLreqと略記する）…日本語書籍版である．…なお，本書自体も，Antenna House Formatterで組版を行い，PDF出力を版下として用いて製作した．」

電子書籍と紙の本の同時制作のしくみ：オライリーなど

米オライリーメディア社では、ひとつのソースから(X)HTMLに変換してEPUBなど電子書籍と同時にHTML+CSS（印刷用）の組版でPDFが作られてます。
組版にはAntenna House Formatterが使われています。
アンテナハウスも、クラウド型汎用書籍編集・制作サービス CAS-UBというシステムを作っています。

CSS3 (and HTML!) for Publishers, by Nellie McKesson (O'Reilly Media)の資料より引用

“HTMLBook”仕様について（オライリーが提唱）

HTMLBook：HTML5で本の内容をマークアップする方法を定義
HTML5はそれまでのHTMLよりも、文書構造のためのタグが充実：article, section, asideなど。でもまだ足りない。
そこでEPUB3 Structural Semantics Vocabularyをベースに、書籍のための語彙を定義。data-type属性に指定（EPUBのepub:type属性と同様）。例：<section data-type="chapter">
ドラフト仕様、サンプルなどオープンソースで公開
https://github.com/oreillymedia/HTMLBook

参考記事：“HTML5 is the Future of Book Authorship” by Sanders Kleinfeld

書籍組版のためのCSS仕様

CSS Paged Media Level 3 (CSS3 Page)　←これが基本
(@page {...}でページレイアウトを定義)
CSS Generated Contents for Paged Media
(CSS3 GCPM、ページ媒体用生成内容。柱・脚注・相互参照など、書籍組版に必要な機能を定義。図版の様々なを配置Page Floatsも含まれていたが今後別モジュールに)

標準仕様が未完成のドラフトの状態。

Prince XMLとAntenna House Formatterがドラフト仕様＋独自拡張で実装している。

W3C Digital Publishing Activity

W3C Digital Publishing Activity http://www.w3.org/dpub/
Web標準技術（HTMLやCSS）を電子書籍とともに紙の本も含む出版に活かすための取り組み。
そのワークショップが今年2月にニューヨーク、6月に東京、9月にパリで開催。
各ワークショップのプレゼンやレポートが公開されていて、Web標準技術で本を作るための課題は何か、現在の仕様で足りないものは何かが議論されてます。
オライリー（AHでCSS組版）やアシェット社（PrinceでCSS組版）の事例も発表されている

書籍組版のためのCSS標準化を進める動き

W3C CSSWGで書籍組版用CSS仕様(GCPM)のエディタのホーコン・リー氏（CSS仕様の生みの親で、Opera CTO）が、WHATWGで標準化作業をすると発表。

WHATWG (Web Hypertext Application Technology Working Group)は、HTML5の標準化作業をW3Cとともに行っていることで有名。

CSS Books (GCPM)
CSS Figures (Page Floats)

W3C標準仕様を目指すことに変わりはない。W3C CSSWGでも議論が活発に。

CSS仕様標準化に期待。実装も進めなくては

W3C仕様が勧告になるには、最低2つのきちんとした実装があることが条件です（わがAntenna House Formatterはそのひとつになり得ます）。
W3C Digital Publishing Activityや、CSS Books/Figures仕様をWHATWGでという動きなどによって、書籍組版のためのCSS仕様の標準化が進むことを期待。
Antenna House Formatterも今後のバージョンアップで、新しいCSS標準仕様を実装していきたい。

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